研究概要 |
本年度はニホンザルの帯状回の遠心路の検討とレクチンによる多重標識の手技の確立に重点をおいた。後者は使用したLCA(レンズマメ凝集素)とSBA(ダイズ凝集素)の軸索内輸送が顕著でなく、ABC(アビケンビオチンペルオキンダーゼコンプレックス)法で証明するに到らなかったため、前者のWGA-HRP(コムギハイ凝集素と西洋わさびペルオキシダーゼコンプレックス)法を使用した帯状回の遠心路(求心路も同時に証明される)について概説する。 方法と結果:サル7匹の帯状回(主として脳梁上部域)の各所にWGA-HRPを注入し、二つからの求・遠心路をTMB(テトラメチルベンチヂン)法法で追跡した。從来、この帯状回域は、細胞構築学似にBrod mannによって24野(前部,無顆粒皮質)と23野(後部,顆粒皮質)に分けられていたが、この区分はあまり適切でなく、純粋な無顆粒皮質は24野の前半で、BoninとBaileyのLA域にほゞ相当し、その後方は次第に顆粒層が発達してくる(乏顆粒皮質から顆粒皮質へ移行,BoninとBaileyのLC域)。 これらの領域の皮質間結合は両行性で多領域にわたり、しかも共通した結合が特長であった。即ち、新皮質領域では、前頭連合野(主溝と弓状溝を中心とする領域)、側頭連合野(上側頭溝上唇を中心とする領域)と頭頂連合野(頭頂間溝の後部外方皮質域と前楔状域,但しLA域はこの結合を欠く),辺像皮質あるいは旁辺像皮質域では、海馬旁回,鼻溝,眼窩面皮質や島との皮質間結合を示す。LA領域がなぜ頭頂連合野との結合を欠くのかは不明であるが、これらの結果は、帯状回領域が全体として、辺像皮質と新皮質連合領の両者の活動を調整している可能性を示唆する。以上の全結果は現在投稿中である。(裏面参照)。
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