研究概要 |
成猫の三叉神経中脳路核ニューロンのうち、咬筋および側頭筋支配のものは同側の三叉神経中脳路核の吻側端から尾側端に亘る全域に分布し、全体の2/3を占めるが、そのうちの約40%は1〜9本の一次樹状突起を有する多極性ニューロンであり、残りは偽単極性ニューロンであった。閉口筋の一つである内側翼突筋を支配する三叉神経中脳路核ニューロンは、極めて少数ながら、全て多極性ニューロンであった。他方、上顎および下顎の歯根膜支配の三叉神経中脳路核ニューロンは同側の三叉神経中脳路核の尾側半に限局し、その数は全体の約1/3を占めるが、ほとんど(98%以上)が偽単極性であった。上顎支配のものと下顎支配のものは別々のニューロンであるが、両者のニューロン分布域な重なり、ニューロン数にも差が認められなかった。以上の様な成猫での観察結果が、生下時,生後10日,20日,30日の脳成熟過程でどの様にかわるかをWGA-HRP法,チトクローム酸化酵素とデアホレースの組織化学法を用いて調べた。同時に顔面洞毛から脳幹への入力投射パターンも観察した。その結果、三叉神経中脳路核ニューロンのニューロン数(1500前後)や多極性のものと偽単極性のものの割合および両者の分布域等は成猫と差が認められなかった。また洞毛入力は三叉神経主感覚核腹側部、三叉神経脊髄路核の中間亜核と尾側亜核では、生下時に洞毛配列を反映した明瞭なpatchパターンをすでに形成していることを明らかにした。続いて胎生期における三叉神経中脳路核ニューロンの動態観察を開始したが、胎児の脳標本作製上の困難さが比較的大きく、現在に至るも生後標本と比較し得る程の標本が得られていない。しかし、本研究により三叉神経中脳路核ニューロンは生下時と成熟した時期で差がないことが判明したので、胎生期の三叉神経中脳路核ニューロンの動態を次年度に明らかにしていく予定である。
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