研究概要 |
本研究の目的は視床の運動系中継核VA-VL Complexの細区分とその線維連絡についてサルで実験的観察を行い、運動機能解明の形態学的基礎を築くことにある。方法はHRP法,オートラジオグラフィー法を用いた。本年度は視床のVAmc,VApc,VLo,VLc,VLm,VLps,X,VPLoの各々の核の大脳皮質投射を観察し、皮質投射域と層的分布を明らかにした。主な所見は、1.大脳皮質への表在性投射(【I】層の表層半分に終止)は主にVApc,VLoから起こり、VAmc,VLmからも軽度に起こる。 2.VApcは運動前野、特にarcuate genuからarcuate spurのまわりと補足運動野に、VLoは運動野の上肢支配域(hand moxor areaに最も強く終止)及び運動野の吻側背内側部(superion precentral sulcusの周囲)にそれぞれ表在性の投射をする。 3.VAmcはarcuate genuとarcuate spurの脳溝堤に、VLmはarcuate spurと中心溝の腹外側部の吻側堤に表在性投射をする。 4.大脳皮質の深在性投射(【III】層深層,【V】,【VI】層)に関しては、VApcが運動前野全域と補足運動野及びその近傍の帯状溝の腹側堤に、VLoは運動野(主に吻側部)に、VAmcはarea 6aβ,弓状溝堤,前頭連合野にそれぞれ投射する。VLc,X,VPLoはいずれも深在性投射のみ行う。VLcの背側部はarea 6aαとその近傍の運動野に、内側部はarea 6aβと前頭連合野に投射する。VLcの尾部腹側は運動野と相互連絡し、外側から内側にかけて体局在性が見られる。 5.以上の所見から、小脳歯状核の吻側部はVApc,VLoを経由して運動前野と運動野にそれぞれ表在性投射をし、歯状核の尾側部はarea X,VLcの内側部、VAmcを経由して前頭連合野に深在性投射をすることが予想される。室頂核と後中位核はVPLoを経由して運動野下肢支配域に深在性投射することも予想される。今後はこれらの連絡と基底核、脳幹と視床の連絡についても実験的観察を行う予定である。
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