研究概要 |
外分泌腺(ラット並びにマウスの膵腺,唾液腺および涙腺)腺房細胞は、酵素処理を施すことにより、単一細胞あるいは2-細胞のレベルにまで分散できた。こうした標本にパッチ・クランプ法を適用し、膜電流を計測することで、膜を介した物質輸送系の特性、細胞の情報伝達機序およびそれらの統合機能である分泌(〓素・蛋白並びに等張イオン液)を説明することが当研究の目的である。器官としての外分泌腺を評価する上で、基本的な膜領域、つまり側底膜,管腔側膜,gap-結合の特性を、分泌刺激下で充分に理解しておくことが前提となる。現在までに、個々の膜領域で得られた実験結果を概説する。 1.側底膜での輸送系と細胞内メッセンジャー。 (1)ラット膵外分泌腺の単一細胞において、GTP-γsにより誘発される【Cl^-】性電流を同定した。GTP-γsの効果は、GTP-結合蛋白刺激によるイノシトール代謝系回転の結果、細胞内【Ca^(2+)】濃度が上昇し、【Ca^(2+)】-感受性【Cl^-】-チャネルの活性化によると考えられる。細胞内への【Ca^(2+)】投与及び、イノシトール1,4,5 3リン酸の投与は、こうしたGTP-γs効果をある程度再現することができた。 (2)同様の標本を用い、【Na^+】-アミノ酸共輸送電流の計測に成功した。l-アラニン輸送電流は温度依存性が高く、Michaelis-Meuten型Kineticsで記述できた。l-アラニンのKm値は1.7(mM),【Na^+】のそれは50(mM)であった。 2.管腔側膜での分泌過程 涙腺腺房細胞をアセチルコリン(【10^(-6)】M)で刺激した場合、顕著な膜容量の増大(exocytosisによる)が計測できた。現在、この現象を細胞内メッセンジャー並びにインシュリン刺激下で追求している。
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