研究概要 |
光環境と内分泌系を結ぶ場としての松果体の働きは、哺乳類から下等脊椎動物まで広い動物種で確かめられている。我々は直接の光受容能力をもつ円口類,魚類,両生類の松果体を用いて、その光受容機構を、主として電気生理学的方法及び形態学的手法によって検討してきたが、視物質自体の動態については、量的に極めて微量なことが障害となり、今まで殆ど解明されていなかった。今回、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いての高精度の分析と、単一光受容細胞における電気生理学的測定を組合せ、さらに側眼網膜での結果と比較して、松果体機能の分析を進めた。 1.高速液体クロマトグラフを使用した実験ではオキシム法を用い、校正には結晶レチナールから作った各種の異性体のオキシムを含む標準液を使用した。まづ、網膜で測定したところ、11-cis-retinal oximeと11-cis-3-dehydroretinaloximeのピークが顕著であった。次に多数の松果体を暗室内で摘出し、HPLCで測定したところ、3-dehydroretinal oximeがretinal oximeに較べてかなり多いことが分った。即ち、ビタミンA1系色素とビタミンA2系の色素が混在しており、その中ではビタミンA2系の割合が多いことが明らかとなった。さらに、alltrans型異性体の割合が、網膜の場合より多いことも特徴であった。 2.電気生理学的手法を用いて、松果体光受容細胞から細胞内記録によるスペクトル感受性の測定を行なった。幼生松果体では505nmにピークを示したのに対し、成体では20nm程長波長側へ移動していた。このことは変態時に視物質の変換が行なわれている可能性を示すものとして興味深い。
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