研究概要 |
プラスミノーゲンはエラスワーゼにより分解され, K_1-K_3, K_4, K_5+L鎖の3つのフラグメントにわけられる. 糖鎖はK_3にあるAsn288に一ヶついており, K_3とK_4の間のTbr345にもう一つついている. これをplg1と言い, Tbr345のみについているものをplgIIと言う. 今年度はプラスミノーゲンの高次構造のエラスターゼ分解に及ぼす影響と糖鎖のエラスターゼ分解に及ぼす影響を検討した. Glu-プラスミノーゲンIまたはIIにトラネキサム酸を加えると高次構造が変化し, Glu-プラスミノーゲンはウロキナーゼ等で活性化され易くなるが, エラスターゼで分解する時もトラネキサム酸が存在すると分解され易くなる. トラネキサム酸の濃度を変化させてプラスミノーゲンの分解の程度をしらべるとKdは0.22mMとなり, Gluプラスミノーゲンのリジン結合部位とトラネキサム酸の解離定数に近い. 即ちトラネキサム酸がGlu-プラスミノーゲンのリジン結合部位と結合するとGlu-プラスミノーゲンは高次構造に変化をおこし, K_3とK_4, K_4とK_5の間の疎水性の部が露出し, エラスターゼにより切断され易くなると考えられる. 同様にGlu-プラスミノーゲンとLys-プラスミノーゲンを比較すると高次構造が疎になっているLys-プラスミノーゲンの方が分解が早い. 次に糖鎖の影響をしらべると糖鎖を2つもつGlu-プラスミノーゲンの方が1つもつGlu-プラスミノーゲンIIより分解をつけにくかった. このことはK_3に付着している糖鎖がエラスターゼによるPro337-Asp338, Val_<353>-Val354の間の切断に立体阻害をかけていることを示す. 今後はプラスミノーゲンの糖鎖とアクチベーターの糖鎖の構造に及ぼす影響をしらべてゆきたい.
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