腎近位尿細管ブドウ糖輸送担体の蛋白マッピングによる解析

1986 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 61570043
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 福原 吉典 阪大, 医学部, 助手 (90165308)
• 研究分担者: 堀尾 勝 大阪大学, 医学部附属病院・第一内科, 医員 (20273633) ; 三上 裕司 大阪大学, 医学部・第一内科, 助手 (30181861)
• キーワード: ブドウ糖輸送 / 近位尿細管 / 刷子縁膜ベジクル / 側底膜ベジクル / 輸送担体蛋白 / アミノグリコシド系抗生物質 / ネフロン不均一性 / 電気泳動法

研究概要

1.家兎およびラット腎より近位尿細管【S_1】+【S_2】および【S_3】由来の刷子縁膜ベジクル、側底膜ベジクルの調製法を確立した。前者はCa沈殿法、後者はパーコル密度匂配遠心法を用いた。
2.アミノグリコシド系抗生物質であるゲンタミシンによるブドウ糖輸送障害について、近位尿細管【S_1】+【S_2】および【S_3】由来の刷子縁膜ベジクルを用い輸送速度論的解析を行った。障害様式はin vivo投与時、in vitro系添加時でそれぞれ異なり、前者では親和性の低下、後者では用量依存性の輸送容量減少が認められた。輸送障害はin vivo、in vitroいずれの系においても【S_1】+【S_2】由来ベジクルにおいて著明で、in vitro系で求めたゲンタミシンの阻害定数は【S_1】+【S_2】で4mM、【S_3】で7mMであった。この障害度のネフロン不均一性は既に報告されている病理組織学的にみた障害度と合致する成積であった。また、ゲンタミシンをin vivo投与した際の刷子縁膜蛋白のSDSポリアクリルアミド電気泳動パターンでは、非投与対照群のそれとの間に差異が認められなかった。
3.アミノグリコシド系抗生物質の1つで臨床的にゲンタミシンより腎毒性が少ないとされるネチルマイシンについても、上記の系を用いブドウ糖輸送障害の面よりゲンタミシンとの比較を行った。ネチルマイシンはin vivo投与ではブドウ糖輸送障害をおこさず、in vitro系においてもその阻害定数がゲンタミシンのそれの2倍以上の値で障害度が低いことが示された。
4.SDSにて可溶化したベジクルをスラブゲル電気泳動し、エレクトロブロット後、RI標識フロリジン結合によるブドウ糖輸送担体蛋白の同定法を検討中である。今後膜標品の可溶化条件、電気泳動およびブロッティング条件について検討し、ブドウ糖輸送担体蛋白同定の至適条件を設定する予定である。さらに、二元電気泳動法による膜蛋白マッピングも検討する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Masaru Horio: Biochimica Biapbysica et Acta. 858. 153-160 (1986)
• [文献書誌] 福原吉典: 日本腎臓学会誌. 28. 931-934 (1986)
• [文献書誌] Enyu Imai: Metabolism. (1987)
• [文献書誌] E.Drioli;M.Nokagaki eds;Yoshimasa Orita: "Disorder of conpled transport in rcnal brush border membraue vesicles from rabbits with experimeuntal Fanconi syadrome induccd by anbydro-4-epitetracycline as a modcl of membrane disease.In :Membranes and Membrane Processes" Plenum Pub.Co.,Mew York, 663 23-30 (1986)
• [文献書誌] T.Tanabe;J.B.Hook,H.Endou eds;Yoshifumi Fukuhara: "Evaluation of aminoglycoside nephrotoxicity in the vesicle studies.In:Nephrotoxicity of Antibiotics and Immunosuppressants." Elsevier Sci.Pub.B.V.,Amsterdam, 227-236 (1986)
• [文献書誌] J.B.Puschett;A.Greenberg eds;Yoshimasa Orita: "Enbanced ncphrotoxicity of gentamicin by furosemide.In:Diuretics 【II】:Chemistry Pharmacology and Ccinical Applications." Elsevier Sci.Pub.,New York, 693-698 (1987)
• [文献書誌] F.Alvarado;H.van Os eds;Yoshifumi Fukuhara: "Heterogeneity of sodium-and potassium-dependent L-glutamute tranaport sites along the renal proximal tubule.In;Ion gradient-coupled transport." INSERM Symposium 26.Elsevier Sci.Pub.,Amsterdam, 442175-178 (1986)
• [文献書誌] F.Ablvarado;H.van Os eds;Yoshimasa Orita: "Sodium/proton antiport in renal bruoh border membrane vesicles from model Fanconi state rabbits. Ic;Ion gradient-coupled transport." INSERM Symposium 26,Elsevier Sci.Pub.,Amsterdam, 442279-282 (1986)