研究概要 |
Naチャンネルの機能的構造を明らかにするべく行なわれた三年間の薬理学的研究の成果は主として下記の三つに分類される。 1.環状ポリアミンによる細胞内面からのNaチャンネルの閉塞機序について。環状ポリアミン(cyclam)とそのアルキルグアニジニウム側鎖を持つ化合物(Gーcyclam)はいずれもNaチャンネルを細胞内面からのみ閉塞する。G-cyclamは膜脱分極依存性に作用が強くなり単一指数関数を持つ時間経過で抑制する。 cyclamも同様であるが抑制の時間経過は二つの時定数で表わされる。又細胞内面のNa濃度を50mMから200mMに増加すると抑制の程度が強まる。これらの事実はNaチャンネル内に閉塞分子とNa^+が競合する場所がある事を推測する事で良く説明出来る。二つの化合物の持つ閉鎖機序の比較を通じて下端に陽電価を持つアルキルグアニジニウム基の持つ生理的意義が明らかになった。アルキル基によって自由な運動が得られたグアニジニウム基はNaチャンネル内に存在する陰電価とイオン結合する事により閉塞効果を一層高めている。 2.クモ毒による細胞内面よりのNaチャンネル閉塞機序について。 2,4ジヒドロキシフェニルアセチルーアスパラギニールーカダベリノ-プトレアシンを共通構造として持つTSIX-3とNSTX-3は1.に述べたG-cyclamと極めて類似した閉鎖作用をNaチャンネルに引き起す。これらの生物毒の持つ長い柔軟性を持った構造を考慮すればG-cyclamと同じ様にNaチャンネル内の陰性基への接近がそれらの物性故に容易になるためと考えられる。 3.グラヤノトキシン(GTX)の作用部位の決定 ^3H-GTXの細胞膜透過の証明と細胞内灌流を保った時と止めた時の脱分極の差から細胞内面に受容体がある事が解った。この一連の研究からNaチャンネルに対し高度に特異性を持つ生物毒の新らたな発見によりチャンネルの機能的構造について類推が可能となった。
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