1.モルモット乳頭筋の実験 (1)この標本はカテコラミン作用下に容易に可逆的に小胞体の振動性Ca放出をひき起こすので、研究目的に適した標本であることがわかった。 (2)Mgがこの振動性Ca放出を特異的に抑制することが見出された。種々の実験から、このMgの作用は細胞内において小胞体のCaを安定化させるためであると考えられた。 (3)Mgは上記作用発現時に、同時に単収縮張力を増強することが判明した。このことも、Mgが小胞体Caを安定化させるということにより説明される。換言すると、振動性Ca放出は微視的レベルにおいて小胞体Ca量を減少させるひとつのメカニズムとなっており、形質膜のCa排出機構と連動して、細胞のカルシウムホメオスタシスの重要な因子となっていると考えられる。 2.モルモット単離心室筋細胞の実験 (1)小胞体Ca放出により細胞質Ca濃度が上昇した場合に発生する形質膜の電気現象についてパッチクランプ法により観察した。その結果、【10^(-6.5)】M程度のCaにより活性化される非特異的イオンチャネルが見出された。このチャネルの性質についてさらに解析中である。 (2)カフェインを与えて小胞体のCaを放出させた時の膜電位変化を微小電極法により観察した。その結果、上記の非特異的イオンチャネルに起因する電位動揺のほかに、特異的な脱分極性のパルス状電位変化が発生することを発見した。これが、Ca排出機構に関連する現象であるとの仮説のもとに鋭意実験中である。
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