(1)電子伝達フラビン蛋白(ETF)のアポ蛋白の簡便で収率のより調製法を確立した。 (2)ETFアポ蛋白とFADとの再結合反応を蛍光分法により、速度論的・平衡論的に検討した。アポ蛋白保存液を目的の濃度に希釈し、それに少量のFADを加えて(アポ蛋白大過剰の条件)反応させた。アポ蛋白希釈直後の見かけの速度定数(Kobs)をアポ蛋白の種々の濃度で測定した。この反応は擬一次反応であり、KobsはFADと直接反応する物質の濃度の増加とともに直線的に増加した。次にアポ蛋白希釈後のKobsの経時変化を調べたところ、Kobsは時間とともに減少し、やがて一定の値におちついた。また低濃度に希釈するほどKobsは減少した。これらの現象は蛋白濃度が低いほど、平衡状態でFADと直接反応する物質の割合が減少することを示している。これはアポ蛋白の二つのサブユニットαとβとが可逆的に解離会合し、その二量体がFADと結合することを示唆するものである。すなわち、αーサブユニット、βーサブユニット、FADの間にはα+β【double half arrows】αβ、αβ+FAD【double half arrows】ホロ蛋白という少なくとも二つの平衡系が存在し (3)ETFに電子を供与するdehydrogenaseの1つにgeneral acyl-CoAdehydrogenase(GAD)がある。GADからETFへの電子移動過程は複数あること、種々の酸化還元状態にあるGADと生成物との複合体が電子移動に関与することが知られている。ここでは酸化型GADとacetoacetyl CoAとの複合体の構造を共鳴ラマン分光法で調べた。電荷移動吸収帯(632.8mm)励起により測定した共鳴ラマンスペクトルには、酸化型フラビンの特徴を示す1583、1550cm^<-1>のバンドが強く現われた。これらのバンドはフラビンのC(4a)-N(5)の伸縮振動に関係したモードであり、acetoacetyl CoAがフラビンのC(4a)-N(5)の領域と相互作用していることが判明した。 (4)ETFの反応で大切なアニオン型セミキノンを共鳴ラマン分光法で研究する準備としてDーアミノ酸酸化酵素のセミキノンの共鳴ラマンスペクトルを測定し、そのバンドの帰属を行った。
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