研究概要 |
1.4dihydrapyridine系のCa-agonist,CGP-28392はラセミ体であるので、本実験では分離されたCa-agonist,(+)PN(S)202-791とCa-antagonist,(-)PN(R)202-791のCa活動電位への効果を、マウス膵β細胞を用いて検討した。11、2mMのグルコースをβ細胞に与えると、slow waveを伴ったburst typeの活動電位が発生する。もちろんインシュリン分泌も同時に起こることが報告されている。この活動電位を発生しているβ細胞にCa-agonistを与えると、300〜400%のslow waveのプラトウ相の延長が起る。しかもそのプラトウ上には、ある細胞では、数多くの大きな活動電位の発生がみられるが、多くの細胞では数mVの大きさの小さい電位発生が著明である。静止電位は脱分極傾向にあるが、それ程著明でない。大きな活動電位発生の時間は対照に比べると約20%の延長がみられる。細胞外Caイオン濃度を減少すると、膜がプラトウレベルに脱分極し、活動電位発生はより規則的になるが、小さい活動電位発生は消失する。しかし正常濃度のCaイオンを与えると、活動電位発生頻度の上昇についで、膜の再分極が著明となり再びburst tipe の活動電位がみられる。他方11、2mMグルコースで誘発された活動電位にCa-antagonistを与えると、プラトウ相は短縮する。さらに膜はプラトウ相のレベルまで脱分極して、活動電位は消失するが、脱分極電流によって活動電位を発生させることが出来る。インシュリン分泌へのCa-agonist,antagonistの効果は検討中である。以上の結果よりβ細胞には2種のCaチャンネルの存在が推測され、Ca-agonistは1つのCaチャンネルをより選択的に活性化してCaイオン流入を促進してプラトウ相の延長をもたらす。一方Ca-antagonistの作用は、低濃度のCaイオンの結果より、上記のCaチャンネルを抑制してプラトウ相を短縮し、ひいてはCa依存性K電流を抑えて膜の脱分極とインシュリン分泌を抑制すると推測される。
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