1.エビ神経束を用いた実験。 (1)直線二色性シグナルの誘導。神経は、光学的には、複屈折性・旋光性・直線二色性:円二色性を持った物質と考えられ、興奮にさいしてこれらの性質が変化してシグナルとして記録される。直線二色性のシグナルは今まで充分に記載されているといえないので、エビ神経束からこれを記録した。変化の大きさは複屈折性変化の十分の一以下であった。 (2)円二色性シグナルの検索。神経が興奮すると旋光性の変化が起るがこの中に円二色性変化のシグナルの寄与があるか否かが問題となる。円二色性シグナルと旋光性シグナルとは、次のような異る性質を持つ。もし神経の方位角を90゜かえると、円二色性シグナルはその方向をかえるが、旋光性シグナルはその方向をかえない。また。検光子の方位角を90゜かえると、円二色性シグナルはその方向をかえないが、旋光性シグナルはその方向をかえる。実際に、上に述べた操作を試みると、現在の旋光計で得られるシグナルは測定精度内では全く旋光性シグナルの性質を示すことがわかった。 (3)神経の張力と旋光性シグナルとの関係。エビの神経の旋光性シグナルはその方向が一定せず、右旋性の増加を示す場合と減少を示す場合とがある。この原因として、神経線維膜の表面に溝やくびれがあり、興奮性膜がこれに対し直角に軸を持っているため、光線の軸と分子の軸とのなす角度の分布が標本によって一定しないためということが考えられる。この考えを検証するため、神経をチェンバーに張る時の張力をかえて旋光性シグナルを記録したところ、右旋性増加のシグナルが張力の増加により左旋性増加のシグナルに変化することがみとめられた。 2.イカ巨大線維を用いた実験 現在、イカの巨大線維からの旋光性シグナルのS/Nの向上につとめている。
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