研究概要 |
1.エビ神経束を用いた実験 (1)神経の興奮の伝導方向と旋光性シグナルはその符号が一定せず, 標本によって右旋性増加の場合と左旋性増加の場合とがある. 符号を決定する要因の1つとして, インパルスの伝導の方向が関係することが見出された. 多くの神経においては, 中枢端を刺激することにより右旋性増加, 右旋性減少の二相性の応答が得られるが, 末梢端刺激により, これを反転させた応答が得られた. この応答は, 偏光子の軸を神経に対し反対側におくと反転するので電気的アーテファクトではない. また, この応答は, 1μMのテトロドトキシンにより消失するか強く減少し, KCIにより消失するので, 電極反応ではない. 旋光性変化のシグナルには, しばしば複屈折性変化が, 重畳してくるが, この変化は, 興奮伝導の方向に関係なく一定の符号を保つ. 以上の結果から現象的には, 旋光性シグナルの符号は, 膜電位の空間的な勾配によって定められる, と言えることがわかったが, 分子的な発生機構はまだ解明されていない. (2)神経の張力と旋光性シグナル. 旋光性シグナルの形および方向は, 神経に与える張力により強く影響される. 神経が弛緩している時には, 旋光性シグナルは経過の長い多相性の変化であるが, 神経に張力を与えると, 旋光シグナルは持続が短くなり, 複屈折性変化に先行する鋭いシグナルに変化した. 更に張力を高めると, シグナルの形は変化して二相性となり, 時には全くその方向を変化させた. 旋光性シグナルの方向は, 少くとも上記(1), (2)の2つの要因に支配されていることが明らかとなったが, その機構についてはまだ解明されていない. 2:イカ巨大線維を用いた実験. 装置のS/Nの向上によりシグナル検出頻度は高まったがまだ充分といえない.
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