研究概要 |
胎生-新生ラットの脊髄摘出標本を用いて, 後肢のリズム運動に関与する脊髄内神経機構とその発達について調べ下記の諸点を明らかにした. (1)興奮性アミノ酸の一種であるN-Methyl-D, L-aspurtate(NMA)は腰髄内のリズム形成の神経回路を構成する介在ニューロン群を興奮させ, 後肢の歩行様運動を誘発する. (2)基本的なリズム形成の神経回路は脊髄の両側にそれぞれ単独に存在するが, 歩行運動のパタンの形成には左右の神経回路の相互作用が必要である. (3)NMAによって誘発されるリズム運動は胎生15.5日に初めて出現する. 胎生期においてもNMAは脊髄のリズム形成の神経機構に直接作用し, 運動ニューロンに周期的な興奮を引き起こす. (4)両側の運動ニューロンの周期的な発射活動は胎生15.5日と胎生16.5日では同期しているが, 胎生18.5日以降では交代性のパタンに変化する. また, その移行期である胎生17.5日では左右の前根のリズムは独立した周期で出現する. (5)抑制性伝達の遮断によっても胎生16.5日までのリズムのパタンは変化しない. しかし, 胎生17.5日以降では左右のリズムは抑制路遮断によってそれより前の日齢と同様な周期するパタンに変化する. したがって歩行に代表される左右の交代性リズムの出現には抑制路の機能の発達が不可欠であると考えられる.
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