研究概要 |
ニコン蛍光顕微鏡を固定ステージに装着し、DAPIまたは5,7-DHTを予め鯉の眼球内に投与してコリンまたはセロトニン細胞をラベルし、剥離網膜標本を観察したが、この試みは失敗であった。魚類網膜ではDAPIは殆どの細胞に取り込まれ、コリン特殊性が無く、また5,7-DHTの自家蛍光は検出できなかった。当初購入を予定したツァイス蛍光顕微鏡のフィルター系とニコンのものとに、大きな相異があるためと考えられる。従って戦略を変更し、ホルムアルデヒド液で短時固定した網膜標本を用い、蛍光顕微鏡下にドーパミンでラベルした細胞を直視しながら、ルシファ黄(LY)封入のガラス微小電極を胞体内に刺入し、LYを電気泳動的またはピコスプリッツァーによって注入した。この手技により、鯉網膜のドーパミンおよびセロトニン細胞の個々について樹状突起の形態を明確にできた。ドーパミンおよびセロトニン細胞の樹状突起野と重畳度は、それぞれ平均0.1【mm^2】と3.0および0.2【mm^2】と6.0であった(論文2,4)。それらアマクリン細胞の光応答は樹状突起の内網状層での分布様式から、オンおよびオフ両応答に関与していると考えられる。他方、生きている網膜標本において、4種の光応答を区別し、それぞれの起源アマクリン細胞をLYでマークし、胞体形、樹状突起の拡がりと内網状層での分布様式に基づいて8亜種を分類した(3)。従って、この手技により、鯉網膜アマクリン細胞の光応答・形態の相関が確立した。こんごLYでマークしたアマクリン細胞の含有物質を免疫組織学的に検出する必要がある。別の実験では、6-OHDAによる網膜細胞の部分的破壊後、稚魚(金魚と鯉)網膜において、成長と網膜再生に伴って、ドーパミン細胞が異常に群生してくることを見出した(5)。こんご再生に伴うアマクリン細胞の可塑性に関連して、免疫組織化学的に、ペプチド含有のアマクリン細胞の形態を調べゆく必要がある。
|