研究概要 |
われわれは先に後内側腹側核固有部と後外側腹側核とからなる視床腹側基底核群の尾側部被殻領域に特異的侵害受容ニューロンと広作動域ニューロンが分布し, これらのニューロンが皮膚から送られてくる痛みのインパルスを大脳皮質の1次体性感覚野へ中継することを見出して, これらのニューロンを含む経路が痛覚の主要伝導路であると提唱した. この考えをさらに裏付けるため, 本研究を行い以下の成績をえた. 1.内蔵痛の伝導における視床腹側基底核群被殻領域ニューロンの役割:心臓, 上腹部内臓器官および骨盤臓器からの痛覚線維をそれぞれ含む下心臓神経, 大内蔵神経および下腹神経きからの入力が視床後外側腹側核に投射することを見出した. この入力を受けるニューロンはすべて皮膚に末梢受容野をうもつ特異的侵害受容ニューロンあるいは広作動域ニューロンであった. この成績は内蔵痛と皮膚の痛みの伝導路が腹側基底核群被殻領域の侵害受容ニューロンを共有することを示唆している. 各神経から入力を受ける侵害受容ニューロンの末梢受容野は特定部に局限し, 内蔵痛に特有な関連痛を収束投射説で説明できまことを示すことができた. 2.視床腹側基底核群被殻領域侵害受容ニューロンの体性機能局在機構: 後内側腹側核固有部被殻領域の侵害受容ニューロンが体性機能局在機構を示すことをすでに報告したが, 後外側腹側核被殻領域にもそれが存在することを多数の特異的侵害受容ニューロンと広作動域ニューロンの活動を記録してその局在部位を確認して明らかにすることができた. 一般ニューロン背側被殻領域の特異的侵害受容ニューロンが体表背側面に, また腹側被殻領域の特異的侵害受容ニューロンが体表腹側面に末梢受容野をもち, ニューロンの局在部位と末梢受容野の局在部位の間に一定の対応関係がみられた. 広作動域ニューロンの場合も同様であった.
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