前年度は、水と食塩水の弁別GO/NOGOタスク時のサルの前頭弁蓋部ニューロン活動を記録した。しかし、弁別すべき味刺激は食塩しかなく、報酬/罰として用いたショ糖やキニーネは味としてサルが認識しているのか、報酬/罰という心理的要因として受容しているのかは判らない。従って、四味刺激を含む多くの味刺激と弁別できるようなタスクの開発が必要となる。本年度は多数の味刺激の弁別を動物に行わせることのできる味覚(遅延)マッチング・トウ・サンプル・タスクを開発した。すなわち、飲み口をくわえたサルの前面にグリーンのライトを点灯し、サルがレバーを押すと第1の味刺激が与えられ、なおレバーを押し続けるとある遅延時間をおいて第2の味刺激が与えられる。なおレバーを押しているとランプが赤色に変わり、サルはレバーを離して2つの手掛かり刺激が同じでおればイエスのキーを押し、異なっていればノーのキーを押す。イエスであれノーであれ正解の時は報酬を与えて強化した。実際にはニホンザルを1頭用いて、先ず水と食塩水の弁別を学習させたのち、レバー離しと手掛かり刺激の関連付け、レバー離しと手掛かり刺激1と2の関連づけを行い、さらにイエスのレバーを押させて報酬をやる、またノーのレバーを押さえる訓練を行った。イエスとノーがそれぞれ確実にできるようになったのち、イエスとノーを交互に行わせ、最終的に完全にランダムに与えた。最後のセッションで正答率が80%以上になったとき、学習は成立したものと考えた。トレーニングの完成には全体としては4-5カ月を要するものと考えられる。現在タスクをもっと簡潔に、サルの訓練が容易になるように、タスク自体を改良中である。今後多数の味刺激間の弁別の正答率と調べたり、弁別行動中の前頭弁蓋部のニューロン活動を記録しようと計画している。
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