南太平洋産ウニの精製の経過は最終的な段階にあるが、抽出過程の見直しなどを含めより効果的な方法の検討も合せて行っている。六二年度中期以降には精製毒による作用機構の研究と構造決定の作業にかかれるものと期待される。今年度は当初計画の変更を余儀なくされたが、日本産ウニから生理活性を検出するなど、これまでに次の点を明らかに出来た。 1.南太平洋産(フィジー)ウニの精製方法がほぼ確立できたことから粗毒の作用が粗毒中の混合物質によるアーティファクトでないことが明確になった。 2.日本産(奄美大島)のウニ(三種)の抽出物から同様の生理活性を確認できた。このことは、この毒がウニに広く分布する可能性を示唆している。毒の構造比較に興味ある結果である。 3.細胞外液のカルシウムやマグネシウムなどは膜の安定化作用でカリウムで脱分極した時の微小終板電位の頻度を減少させるのが一般的性質である。しかし毒存在下では頻度の著明な増加がみられる。この結果は毒が神経終未のイオン透過性を高めて微小終板電位の頻度上昇を起こすとするこれまでの結果を支持するものである。 4.粗毒は、低濃度では微小終板電位の頻度上昇・終板電位の振巾の増大を長時間維持したが、高濃度では初期には低濃度毒の効果をさらに著明にしたが、後期には微小終板電位の頻度減少、終板電位の振巾を減少させることが明らかになった。終板電位への作用は伝達物質の放出確率で説明可能であった。また、この結果から高濃度の毒は伝達物質を神経終未から完全に放出させることが予想された。
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