生体の多くの生理機能にみられるサーカジアンリズムを支配しているサーカジアン振動体は、胎生期に機能を間始し、母親に胎内同調を受けるが、ラットでは出生後も一定期間、母親が仔のリズムを同調しうると考えられる。本研究は、幼若動物にみられる光以外のZeitgebcrによる同調の存在に注目し、同調時期と同調因子の解明を目的として行なわれた。 1.母親との接触度と母仔間同調:母親が授乳中の仔のリズムを同調するかどうかは報告が対立していた。そこで生母と育母の明暗条件を逆転させ、妊娠中に逆の位相で胎内同調を受けた仔ラットのリズムを、育母が同調できるかどうかを調べた。その結果、母親が5匹以上の仔を飼育した場合は育母による同調は少なく、2匹のみの飼育ではほぼ全例が同調した。 2.同期的制限給餌による仔ラット振動体の同調:幼少時に極めて重要な要因である食餌性因子の関与を追求する目的で、食餌を一日一定時間に制限する周期的制限給餌を母仔ラットに課した。周期的制限給餌は成熟ラットのサーカジアンリズムを同調することはないが、その振動体の局在は明らかでない。妊娠中から離乳までの異なる3つの時間帯で周期的制限給餌を課したところ、仔ラットの自発行動リズムの開始は給水・給餌の開始時刻に一致した。また輪廻し行動、摂食、給水、飲水、血漿コルチコステロンの各概日リズムも同一位相を示し、母仔への周期的制限給餌が仔のサーカジアン振動を同調することが明らかとなった。 3.周期的制限給餌の同調時期:妊娠中から離乳3週後までの各時期に母仔ラットに周期的制限給餌を課したところ、同調可能時期は生後2週目までであることが分った。 4.以上の結果、授乳期のラットのサーカジアン振動体は、母親の強い影響下では同調を受け、その同調因子の少くとも1つは、周期的制限給餌により変位する母親のリズムであることが明らかとなった。
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