研究概要 |
水中運動は, 浮力により関節障害を避けながら, 水の抵抗負荷を利用して運動効果を高める有効なトレーニング法として実施されている. その有効性はこれまで呼吸循環系, 体温忠節の面から考察されている. しかし, 水中では浮力により体重が軽減され, 抗重力筋緊張が低下し, 運動に伴う筋や骨への負荷様式は異なると考えられる. これは運動特性に影響し, 更にトレーニング効果を特徴づけていると考えれる. 本研究は, この点を水中運動時の筋電図, 運動単位活動解析により明らかにすることを目的としている. 本年度は前年度後半に行なった水中立位状態での股関節屈曲運動の筋電図的解析をより詳細にすることを主眼とした. <方法>健康成人男性7名を対象とし, 被検者に水浸装置内で直立姿勢をとらせ, その状態から一定角度(120°)の股関節屈曲姿勢を水浸で維持し, 等尺性収縮努力をMVC, その25%, 50%, 75%で行なわせた. その際, 屈曲に携わる腸腰筋, 大腿筋膜張筋, 縫上筋, 大腿直筋の筋電図を記録し, 張力-筋放電関係から筋協調に対する水浸効果を解析した. <効果と考察>上述のように, 本年度は一定の筋収縮努力を行なわせた点が特異的であり, その際にも, (1)水浸時では4筋全ての筋放電量はどの張力レベルでも陸上より低く, 張力に対する筋活動レベルのセットポイントが低下することを確認した. これは, 水浸低重量による下肢重量分だけ作業量が低下したものと理解できるが, 更に, (2)その筋活動の割合は各張力レベルで筋によって異なっていた. すなわち, 水浸時には主働筋の腸腰筋は陸上と同じであったのに対し, 他の協同筋は割合が陸上に比べ, 大きく変化することを発見した. 水中運動では筋緊張レベルが低下するだけでなく, 各筋の参加の割合も異なることを確認した. このことはトレーニング効果を考える場合, 重要な視点であり, 次年度は更に検討を重ねてより定量的な結論を出す予定である.
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