研究概要 |
Whole-cell膜電位固定法を用い、マウスの短指屈筋からコラゲナーゼ処置により単離した筋繊維において、2種のNa^+電流と内向き整流K^+電流I(K,in nward)を記録し、その発達変化、発達に及ぼす支配神経の影響について調べた。 Geographutoxin II(GTX)は、イモ貝からとれるペプチド性毒素であるが、この毒素は、GTX感受性I(Na,s)と非感受性I(Na,i)の2種のNa^+電流を識別した。I(Na,i)の膜電位依存性の活性化と非活性化は、I(Na,s)のそれよりも10から20mV負の電位で起こった。生後8日以前はI(Na,i)とI(Na,s)は同様な速度で減衰したが、加令にともないI(Na,i)の減衰はI(Na,s)よりも約4倍遅くなった。I(Na,s)の電導度g(Na)、は生後20日の間に15倍に増加した。I(Na,i)のg(Na)は生後8日までは0.15mS/uFの水準にあり、その後減少しP16には検出できなくなった。P12に除神経した筋繊維では、I(Na,i)のg(Na)はその後増加したのに対し、全g(Na)の増加は正常の筋における値よりも少なかった。これに対し、P4で除神経した筋においては、全g(Na)もI(Na,i)のg(Na)もP12までは正常の筋以上に増加した。 I(K,inward)はPOの筋繊維および誕生直後に取り出した培養筋管においては見られなかった。しかし、instantaneousと時間依存性の2成分から成るI(K,inward)が、P12より年をとった筋繊維において見られた。生後4日目に除神経をおこなうとI(K,inward)の2成分の発達は抑制された。生後20日での除神経後2日目には、I(K,inward)は生後の低い水準にまで減少した。 結論、生後2、3週の間にI(Na,i)は消失し、I(K,inward)が出現する。I(Na,i)の消失とI(K,inward)の出現には神経支配が必要である。今後、上記のチャンネルおよび以前に調べた2種のCa^<++>チャンネルが筋の機能、発達に果す役割、さらにこれらチャンネルの出現、消長を制御する神経性、非神経性の因子について検討したい。
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