研究概要 |
本年度は、既に同定と分析を終えているcDNAクローンを使用して、ラットリボゾーム大亜粒子蛋白、L35aの遺伝子構成の解析とその遺伝子のクローン化を進めて来た。サザンブロット分析により、L35a遺伝子は少なくも20種以上の遺伝子を持つ多重遺伝子族を形成していると考えられた。事実、ラット遺伝子ライブラリーから、100余のクローンを得て分析し、これが約20種の独立した遺伝子に由来することを確かめている。これらのクローンと、cDNAとの混成分子の熱安定性から、その大部分が種々の程度に塩基配列の変化を来たしている偽遺伝子であろうと考えられた。そこで最も熱安定性の高い二つのクローンの全塩基配列を決定してみた。両者ともcDNAと全く同じ塩基配列を持っていたが、真核細胞遺伝子に通常見られる介在配列は無く、前後を約10塩基ずつの繰り返し配列に挟まれており、メッセンジャーRNAのpoly(A)配列に相当する配列も認められるなど、典型的なretro-pseudogeneの特徴を示していた。しかし一方では、5上流にCCAAT,TATAなど、転写開始に関与すると考えられる配列を持っており、gene amplificationの一つの型とも考えられるため、HeLa cell extractを用いて、in vitro translationtestを行ってみたが、転写活性を示さず、やはり不活性な偽遺伝子であると考えられた。 リボゾーム蛋白がこのように多くの偽遺伝子を持つ意義は全く不明であるが、その手掛りの一つとして進化の上でいつごろ現れたのであるかを調べてみた所、カエル、カメ、ニワトリには無く、マウス、ラット、人など哺乳類に特有なものであることが解った。 更に、真性遺伝子の検索を続ける一方、プローブとなるcDNAの分離を進め、大亜粒子蛋白L31cDNAの同定と分析を終っている。
|