研究概要 |
昨年, ラットのリボソーム蛋白L35aの遺伝子が, 多数のprocesse pseudogeneを含む多重遺伝子族を形成していることを報告したが, 本年度はさらにラットリボソーム蛋白Sll,S17,S26及びL27についても検討を加えた. Southern blot法による全DNA及び分離した遺伝子クローンの解析により, これらの蛋白の遺伝子もやはり, 各々20種程度のprocesse pseudogeneを持つことが示され, このような多重遺伝子構成がラットのリボソーム蛋白遺伝子の一般的な特徴であることが確認された. リボソーム蛋白遺伝子の偽遺伝子の存在はマウス以外には報告の無かったことから, 系統進化上の発生時期を検討するために, ラットL35a, oDNAをプローブとして, カエル, カメ, ニワトリ, マウス, ラット, モルモット, 人などのDNAをSouthern blotによって解析した. ニワトリ以下では, 唯一本のバンドのみであるのに対し, 哺乳類では全て10〜20本のバンドが観察された. これは, L35a遺伝子がニワトリ以下では一種のみであるのに対して, 全ての哺乳類に多数存在していることを示しており, リボソーム蛋白のprocesssed pseudogeneを含む多重遺伝子構成が哺乳類に特徴的なものであることが明らかになった. 現在, 多数の偽遺伝子の中から, 発現している本来の遺伝子を選び出す効果的な手段が無く, 困難な検索を続けているが, 一方で, 偽遺伝子を持たずこのような困難を伴わないと考えられる, ニワトリのリボソーム蛋白遺伝子のクローニングにも着手した. ニワトリの遺伝子クローンを用いて, 目的とする発現調節機構の研究も可能であろうし, この経験を通してラットの遺伝子クローニングの効果的な方法への手掛かりをつかむこともできよう. また, プロープとしてのcDNAクローンの分離も続けており, 新たに, L27cDNAクローンの解析を終えた.
|