研究概要 |
ジアシルグリセロールキナーゼは細胞アゴニスト刺激時にprotein kinase Cと共役して活性化される。これ迄本酵素は粗標品の活性測定により検討されてきたが、我々は精製酵素に対する特異的な家兎抗体調製に成功し、初めて免疫学的検討を加え、以下の知見を得た。1)脳膜画にも可溶性酵素と免疫学的に同一の酵素蛋白が存在する。2)免疫組織染色でニューロンのみに検出された。3)肝由来のキナーゼと交差せず、グリア細胞を免疫染色出来ないこと等から、組織・細胞によるキナーゼの多様性が存在する。3)Sn-2型のモノアシルグリセロールをリン酸化するが、Sn-1型の基質は殆ど利用しない。従って細胞刺激時に本キナーゼはジアシルグリセロールに関してprotein kinase Cと競合する上に、Sn-2モノアシルグリセロールに関してリパーゼとも競合し、細胞機能発現に関与していることが強く示唆される。我々は更に4)、ジアシルグリセロールキナーゼキナーゼが存在し、本酵素のセリン残基をリン酸化することを免疫沈降により証明した。 我々は本酵素に対する単クロン抗体も調製したが(岩田,加納,小野,第59回生化学会発表)、抗体を大量調製出来ず、現在再クローニング中である。現在家兎抗血清を用いて検討続行中であるが、抗体は等電点泳動において、pI6〜6.5に三つのキナーゼ蛋白を認識し、リン酸化されたキナーゼは最も酸性のキナーゼ蛋白であることが分った(山田,加納)。このことはブタ脳キナーゼにIsoformがあり、組織中に既にリン酸化された分子種が存在していることを示唆している。現在、本キナーゼとprotein kinase Cを精製中で、本キナーゼのリン酸化による調節を検索中である。又gene cloningによる本キナーゼの構造決定も実験準備中である。
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