研究概要 |
本研究対象であるジアシルグリセロール(DG)キナーゼは, 膜受容体活性化時にセカンドメッセンジャーであるDGをリン酸化して, 生理活性物質であるホスファチヂン酸を生成する. 我々はブタ脳80kDaキナーゼ, 更にブタ胸腺の同じ酵素に対する家兎抗体を調整し実験した. 1)ブタ各種組織に存在するDGキナーゼの免疫学的検討-ブタ肝, 心, 腎, 脾, 胸腺, 血小板のキナーゼを, イムノブロット, 免疫沈降の手段で解析した. 我々が先に精製した80kDaキナーゼの組織間分布は意外に限定されており, 特に胸腺に多い他, 脾にも存在したが, 他の組織では殆ど検出できなかった. ゲルロ過により可溶性キナーゼは見かけ上280, 120, 80kDaの三つの分子サイズを示し, この中で80kDaの酵素のみが抗体と反応した. 血小板は80kDaキナーゼは存在せず120kDa酵素が主であった. 280kDaキナーゼはリンパ組織に多い. その他の生化学的検討の結果からも, 組織により分子量と抗原性の異ったキナーゼが存在することを初めて示した. 2)DGキナーゼのプロティンキナーゼCによるin vitroリン酸化-この二つのキナーゼは刺激細胞でほぼ同時期に活性化され, 反応機序も類似している. ブタ胸腺より二つの酵素を高度精製して使用した. 両者ともSDS-電気泳動上80kDaの分子量を示した. DGキナーゼはC-キナーゼの良い基質でありモル当り1モルのリン酸化を受ける. プロティンキナーゼAによるリン酸は極く弱い. 二次元電気泳動, プロテアーゼ分解により二つのプロティンキナーゼはDGキナーゼの類似のサイトをリン酸化することが分った. リン酸化によりDGキナーゼは活性化又は安定化される. 3)ヒト末梢リンパ球, ヒト系培養細胞のDGキナーゼの免疫学的検討-家兎抗キナーゼ抗体は, ヒトリンパ球, JURKAT cells,HL-60等の細胞に存在する85kDaキナーゼと交叉する. 現在細胞レベルでのDGキナーゼのリン酸化を免疫沈降で検討中である.
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