研究概要 |
タバコモザイクウィルス(TMV)RNAをRNase【T_1】消化し、開始AUG配列までの70残基よりなる5′先導域断片(Ω断片)を調製した。この断片にγ-【^(32)P】-ATPを用いkination反応で【^(32)P】Cpを調製したものをligationにより結合し放射標識した。この放射化Ω断片を使い、ウサギ網状赤血球溶血系中での開始複合体形成能を検討した。Ω断片での開始複合体形成は、用いたΩ断片量に比例し開始tRNAを結合し、しかもGTPの非水解アナログ(GMP-PCP)を用いた場合や、抗生物質(エデイン)処理した場合に共に80s開始複合体形成を阻害し、40s開始複合体形成を阻害しない結果を得た。この結果からΩ断片で形成される開始複合体は正規の蛋白合成開始経路を経ることが明らかとなった。上記の系を用い開始複合体中で、標識Ω断片と相互作用しているリボソーム蛋白を同定する目的で開始複合体形成後に紫外線を照射し、40sと80sの開始複合体をショ糖密度勾配遠心により分離した。架橋効率は、フィルター結合法により決定した。40sおよび80s開始複合体でその効率はそれぞれ0.4%と0.55%であった。40sと80sの開始複合体中のリボソーム蛋白質は、RNase法により抽出した。試料は、同定を確かにするため二種類の異った系の二次元電気泳動を行い、ラジオオートグラフにより放射活性蛋白質を分析した。40sでは、L5,S7,S10,S25,とS29が、80sではL5,S7,S25,S29が黒化し、開始AUGコドンと相互作用している結果を得た。また、40s開始複合体で同定されたL5蛋白はlarge subunitの蛋白であり5sRNAと複合体を形成して存在することが知られている。そこで40s開始複合体中の低分子RNAを分析したところ5sRNAが同定できた。したがって40s開始複合体中で5sRNA-L5複合体で存在すると推定され、蛋白合成開始段階で5sRNA-L5複合体で機能をしていることが示唆される。
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