研究概要 |
マウスリンパ腫細胞L5178Yの核骨格(核マトリックス)には、細胞質にはないアクチンが存在し、それは通常のα,β,γアクチンよりもさらに酸性側に等電点をもち、特殊な機能をもっているのではないかと推測される。また、これとよく似たポリペプチドが、マウスサルコーマ180細胞、マウスメラノーマB16細胞に存在するが、これらのポリペプチドの異同が問題となる。まず、L5178Y細胞からポリ【A^+】RNAを単離し、in vitroタンパク合成を行わせ、二次元電気泳動で分折したが、酸性アクチンのスポットは検出されなかった。ヒトBアクチン遺伝子にハイブリダイズするポリ【A^+】RNAを選択・濃縮し、これを用いてin vitroタンパク合成を行わせても同じ結果であった。従って、L5178Y細胞に存在する酸性アクチンには固有のmRNAはなく、例えばアセチル化やメチル化によるアミノ基のブロック等の翻訳後修飾である可能性が高いと思われる。一方、サルコーマ180細胞のポリペプチドについては、これが抗アクチン抗体と反応すること、DNaseIと親和性があること、限定分解物のHPLCパターンがβ,γアクチンのそれと似ていることなどから、アクチンの一種であることを確認した。次いで、ポリ【A^+】RNAのin vitroタンパク合成による分折から、固有のmRNAの存在を明らかにした。従って、サルコーマ180細胞の酸性アクチンは、L5178Y細胞のそれとは異なることが示唆された。現在、両酸性アクチンの、二次元ゲルからの切り出しによる精製を行っており、アミノ酸一次配列の決定を計画している。また、サルコーマ180細胞に関しては、酸性アクチンmRNAの構造を決定すべく、cDNAライブラリー調製の準備を行っている。メラノーマB16細胞については、その酸性アクチンが固有のmRNAをもつことをすでに谷口らが確認しているので、その構造を決定するためやはりcDNAライブラリーの調製を準備中である。
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