マウスサルコーマ180細胞より細胞質RNAを抽出し、次いでオリゴαTセルロースカラムによりポリARNAを精製した。グブラーとホフマンの方法によりこれを二本鎖DNAとし、EcoRIリンカーをつけλgtllベクターに挿入した。1.3×10^6PFu/mlのcDNAライブラリーが作成でき、その70%以上がインサートを含んでいることを確認した。ヒトβアクチン偽遺伝子DNAをプローブとしてスクリーニングし、79個のポジティブシグナルを得た。二次スクリーニングにより63個とし、それらの中でインサートの長いものと、上記偽遺伝子のアミノ末端対応部分(150塩基対)とハイブリダイズするもの14個を選択した。12個はβアクチンのcDNAであり、2個はγアクチンのそれであり、酸性アクチンに対応すると考えられるものはなかった。以前の研究から、180細胞の酸性アクチンはβアクチン由来か、アミノ末端がGluーGluーGluではない新種のアクチンであるかのどちらかであることが分かっていたので、14個の中に特別のものが含まれていなかったことは前者の可能性が大であることを示唆した。これらのβアクチンcDNAクローンの中に、酸性アクチンに対応するものがあるとの予想で、アミノ酸配列の変化の塩基配列レベルでの解析を行った。AluI、HaeIII、HpaII、Sau3Aなどの4塩基認識制限酵素で各cDNAのコード領域を切断し、そのパターンをゲル電気泳動で比較したが特に変わったものは見出せなかった。そこで、あるクローン(No4)のコード領域の両端を^<32>Pで標識しておき、他のクローンの同じ領域とアニーリングし、Slヌクレアーゼで処理後変性させ、シークエンスゲルにかけるという方法をとり、あるクローン(No9)に異常な短いDNA断片を検出した。その長さから変異部分が特定できるのではないかと考え、現在解析を行っている。なお、γアクチンcDNAに関しては、完全長のものが得られたと考えている。
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