アレルギーの発現に最も大切なプロセスである肥満細胞からのヒスタミン遊離が、肥満細胞顆粒に局在するchymaseの抗体で完全に抑制される事から、一連のヒスタミン遊離機構にchymaseが重要な役割をはたしていると推定してきた。本研究は、抗-chymase抗体F【(ab´)_2】の細胞内での作用部位を決定する事を中心顆題として行われた。Anti-Chymase F【(ab´)_2】の細胞内への移向を調べるため【^(125)I】でラベルしたAnti-Chymase F【(ab´)_2】を用いた。【^(125)I】-Anti-Chymase F【(ab´)_2】は、時間と濃度に依存して、細胞膜に結合した後に細胞内に取り込まれた。細胞内に取り込まれたF【(ab´)_2】の局在は、Percoll gradientで細胞内オルガネラを分画したところ、Anti-Chymase F【(ab´)_2】は、まず細胞膜に結合した後、経時的にChymaseの局在する肥満細胞顆粒に移向した。またAnti-chymase F【(ab´)_2】の顆粒内への移向に平行して、ヒスタミン遊離は抑制された。なおAnti-chymase F【(ab´)_2】はChy-maseと結合すると酵素活性は抑制される。以上の事実をさらに免疫組織化学的に追求した。Anti-Chymase F【(ab´)_2】は、ウサギのIgG分画であるため、抗ウサギF【(ab´)_2】-PODを用いてAnti-Chymase F【(ab´)_2】の肥満細胞内への取り込みを、酵素抗体法にて追求した。その結果Plasma membraneに最初に結合したAnti-ChymaseF【(ab´)_2】は時間とともに顆粒中に集まることが確認された。しかし0℃の氷中では、Anti-Chymase F【(ab´)_2】はPlasma membraneには結合するが、顆粒中には取り込まれなかった。以上の事から、抗Chymase抗体F【(ab´)_2】は、Plasma membrane上、あるいは肥満細胞顆粒内で作用していることが推定された。しかし、Chymaseの局在がPlasma membraneではなく、顆粒中にしか認められない事からAnti-Chymase F【(ab´)_2】は、顆粒内のChymaseと結合して、その活性を抑制することによってヒスタミン遊離を抑制するものと推定された。
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