目的;近年、色々な種において核内DNA中にミトコンドリアDNAとホモロジーを有するsequenceの存在が報告され、この近傍にrepetitive sequenceが存在している事がヒト、酵母等で明らかになっている。しかし、この核内DNAに組み込まれたミトコンドリアDNAとホモロジーを有するsequenceの機能あるいはRNAとして転写されるかどうかについてはいまだ情報が得られていない。そこで、我々はラット腹水肝癌AH60C細胞由来のcDNAライブラリーよりミトコンドリアDNAとホモロジーを有するcDNAクローンを単離し、その構造を解析することにより、上記の問題にアプローチしようとするものである。 研究実績;ラット腹水肝癌AH60C細胞からTotal mRNAを抽出し、これに対応するcDNAライブラリーをLandらの方法で作製し、ミトコンドリアDNAをプローブとして、ハイブリダイズするcDNAクローンを得た。このcDNAクローンは癌細胞で特異的に発現されるrepetive sequenceともホモロジーを持つ事を明らかにした。次いで、このcDNAクローンのcDNA部分355bpの塩基配列を決定した。5′側約200bpが上記癌細胞で特異的に発現されるrepetitive sequenceと約90%のホモロジーを持ち、その3′側約350bpが、ミトコンドリアゲノムDNAと約90%のホモロジーを有していた。ラット腹水肝癌AH60C細胞より調整したゲノムDNAを、このcDNAクローンのミトコンドリアゲノムDNAとホモロジーを有する部分をプローブとして、サザーンブロッティング法により解析したところ、このcDNAに対応するDNAフラグメントが、ラットのゲノムDNAに組み込まれている事が明らかとなった。現在、このcDNAクローンに対応するゲノムクローンを単離し、解析を試みている。
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