研究概要 |
リシン及びα-サルシは何れも動物細胞のリボソームの大亜粒子を不活性化し、EF1依存のaa-tRNAのリボソームとの結合やEF2-GTP-リボソーム複合体の形成を阻害することが知られている。又、α-サルシンの作用は28SrRNAの特異的部位の切断であることも知られているので、更にリボソームのこれらトキシンによる構造変化について研究した。 これらトキシンによってpoly U依存polyphenylalanine合成活性は5mM【Mg^(2+)】の存在下では著しい阻害がみられるが10mM【Mg^(2+)】の存在下では阻害が余りみられない。このことはトキシンにより、リボソームの構造に変化が起きたためと考えられる。又、リシンとα-サルシンを同時に作用させると阻害が著しく増大することも確められた。 リシン又はα-サルシンによるリボソームのコンフォメーションの変化をしらべるために、これらトキシンで処理する前后における蛋白の状態を【^(14)C】及び【^3H】N-ethylmaleimideで標識し、タンパクを二次元電気泳動により分離し、各々のタンパクの標識の程度を比較した。この結果、リシンで処理した時には大亜粒子のL14に変化がみられ、α-サルシンで処理した時には大亜粒子のL3及びL4に変化がみられた。又、リシンとα-サルシンを同時に作用させるとL3及びL4の変化が増大した。一方小亜粒子タンパクに変化は認められない。 我々は大亜粒子における各タンパクの位置関係を明らかにして来たが、L3,L4,L14は互に近傍に位置しており、これらタンパクはタンパク合成におけるペプチド鎖延長に重要な場所を占めていることが知られている。 これらの結果からリシン又はα-サルシンの阻害機構は、α-サルシンによるrRNA切断部位の近くにリシンの位用部位があり、このことによりリボソームのコンフォメーションに重大な変化を来たし、その結果タンパク合成が著しく阻害されたと考えられる。
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