研究概要 |
神経系に毒性を有する各種薬物は, その主な作用部位により幾つかのグループに分けることができる. 各群の代表的な薬物につきモデル系を作成し, その作用機構をin vivoで解析して以下の結果を得たので報告する. 1.ニューロフィラメント蛋白の軸索内輸送機構: 軸索内のニューロフィラメントは, 従来重合したままの形で輸送されると考えられてきた. この考えに対して, [^<32>P]-オルト燐酸でニューロフィラメント蛋白を標識すると, 通常の速度より速く移動する部分が見出され, また脱重合していると思われる可溶性分画がかなり大量に得られ, 更に坐骨神経運動繊維を用いた長い時間経過の解析から, ニューロフィラメント蛋白の輸送パターンも時間の経過にともなって, 幅が広がり高さが低くなることを見出した. これらのことから軸索内のニューロフィラメント蛋白は重合・脱重合を繰り返していて, 脱重合された形で輸送されるという仮説を提出した. 2.β, β′-イミノジプロピオニトリル(IDPN)の作用メカニズム [^<32>P]-オイル燐酸でニューロフィラメント蛋白を標識してみると, 通常のスピードで輸送される部分以外に, それよりずっと速い速度で移動する部分が見出される. この部分の輸送はIDPNによって全く阻害を受けない. 通常の速度で輸送される部分も, [^<32>P]-オルト燐酸で標識した場合には[^<35>S]メチオニンで標識した場合に比べてIDPNによる阻害効果ははるかに弱い. これらの結果から, IDPNによるニューロフィラメント輸送の阻害はその重合・脱重合変換の阻害にあるのではないかと考え, 現在実験を進めつつある. 3.2.5-ヘキサンジオン及び二硫化炭素の神経毒性 これらの薬物はアクリルアミドと同様に, 軸索遠位部の障害を主とする神経毒性を持つとされている. その毒性発現機序を軸索内輸送の面から解析するため現在中毒動物の作成を行っている.
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