神経毒性を有する薬物の主な標的ごとにモデル系を作成し、その作用機構につき解析を加え以下の結果を得た。 1).コルヒチンの神経毒性:コルヒチン4μgを脊髄神経節に投与すると、微小脊髄構成蛋白であるチューブリンの軸索内輸送のみが特異的に阻害される。この時無脊髄軸索の殆ど全てと有髄軸索の一部は変性をおこすが4日以内に再生しはじめ、これと時を同じくしてチューブリンの輸送も回復する。 2).β.β´-イミノジプロピオニトリル(IDPN)の神経毒性:IDPN1.5g/kgをラットに腹腔注射すると、3〜4日以内と多動を主徴とした神経症状が発現する。この時ニューロフィラメント蛋白の軸索内輸送のみが障害されていることを見出した。ニューロフィラメント蛋白の輸送阻害は約6週間で回復するが、神経症状は回復しない。 3).アクリルアミドの神経毒性:200ppmのアクリルアミドを飲料水に混じてラットに投与すると、約3週間で後肢の歩行障害が始まり、10週間以降には神経症状はほぼ定常状態となる。投与後13週目に脊髄神経節を標識して軸索内輸送の分析を行ったとこな、全ての構成蛋白の輸送速度の増加が認められた。 4).2、5-ヘキサンジオンの神経毒性:0.5%の2.5-ヘキサンジオンを飲料水に混じてラットに投与し、5週間後に脊髄神経節を標識してみると、遅い軸索内輸送を構成している蛋白のうちニューロフィラメント蛋白の速度のみが増加していた。 5).二酸化炭素の神経毒性:1週間後に5回、9週間にわたって二酸化炭素を腹腔内注射したラットではニューロフィラメント蛋白の軸索内輸送のみの増速が見出された。
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