糖原病【II】型は組織のリソソームにグリコーゲンが蓄積する常染色体劣性の遺伝病であり、リソソームに局在する酸性α-グルコシダーゼの遺伝的欠損が原因と考えられている。しかし、ヒトの本酵素の分子レベルでの研究は極めて不十分であり、さらに本疾患は発病時期、臨床症状および予後が著しく異なる三病型があることが知られているが、これら病型と酵素欠損の度合との相関についても未解決のままである。これらの問題を解決するために本酵素の性質について分子レベルでの研究を行い、得られた結果を基礎にして病型と酵素欠損との相関を明らかにすることによって本疾患の発症機構を解明することを最終目的とするものである。本年度は次の実施計画について実験を行った。 (1)ブタ肝の酸性α-グルコシダーゼの精製と性質の検討:本酵素の含量は極めて低いためヒト組織から直接本酵素を大量に精製することは困難であるので、まずブタ肝から精製した。セファデックスG-150による親和性クロマトグラフィーを含む精製法を用いてゲル電気泳動的にほゞ均一な精製酵素を回収率約8%で得ることに成功した。本酵素標品はSDS-ゲル電気泳動法で分子量73Kと64Kの2種の分子種が存在することが確認され、液体クロマトグラフィーが分離され、その酵素活性には大きな差はないことが明らかとなった。 (2)α-グルコシダーゼに対するウサギ抗血清の作成:上記の精製酵素を用いてウサギを免疫することにより抗血清を得たあと、精製酵素をセファローズに結合させた親和性クロマトを用いて精製した。(3)酸性α-グルコシダーゼmRNAに対するcDNAの作成:ブタ精巣からポリARNAを精製し、逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、次いでこれをλgt11の発現ベクターに挿入し、上記精製抗体を用いて多数のクローンをスクリーニングし、陽性を示すクローンを数個得ることができた。現在このクローンの分析を行いつつある。
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