研究概要 |
ピルビン酸脱水素酵素(PDH)は, ピルビン酸の酸化的, 脱炭酸反応に与えるPDH複合体(PDC)の成分である. 近年, 慢性酸血症を示す先天性代謝異常症の主病因として本酸素欠損症が報告されているが, その本態は不明である. そこで, 本酸素の蛋白質並びに遺伝子構造を明らかにし, 欠陥酸素の本態を探り, この難病の医療に貢献することを目標にした. 1.ブタPDHα及びβ鎖の蛋白質一次構造と家兎抗体調製: ブタ心PDCよりゲルろ過カラムを装用したHPLCで3成分に解離・分画し, 得られたPDH(α_2β_2構造)をイオン交換カラムでaとb鎖に分画した. 両鎖をEdman分解法によりNH_2末端周辺の一次構造決定を行い, α鎖は66残基, β鎖は61残基決定した. C末端周辺構造はCarboxypeptidaseY消化物のアミノ酸を同定し, 両鎖とも5残基決定した. ブタ両鎖に対する家兎抗体がヒト両鎖とも交さすることが判明したので, 抗原10ngを認識する高力価家兎抗体を調整した. 2.ヒトPDHα及びβ鎖のcDNAのクローニング: HeLa細胞λgt11cDNAライブラリーから高力価家兎抗体を用いて免疫スクリーニング法でPDHa及びβ鎖部分cDNAをクローンし, これらをプローブとし, 包皮繊維芽細胞pcDライブラリーからハイブリダイゼーション法で1,363bpのα鎖及び1,557bpのβ鎖完全長cDNAを得た. SangerのDideoxy法で両cDNAの全塩基配列とアミノ酸配列を決定し, ブタ酵素と比較するとNH_2末端領域でα鎖は76%, β鎖は79%の相当性が認められた. 3.PDH欠損症の病態: 欠損症患臓器抽出液のSDS-PAGE後のWesternブロット像は, 正常の両鎖は検出されず遺伝子上の変異が示唆された. 今後ゲノムDNAの解析を行ない, 変異DNAの本態を解明中である.
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