本研究は尿素サイクル酵素であるオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)を欠損する2種のマウス(spfおよびspf+ashマウス)におけるアンモニア解毒能を主に肝ミトコンドリアおよび灌流肝レベルで解析しようとするものである。両OTC欠損マウス共に通常の測定条件下で対照の5-30%の肝OTC活性を示すにすぎないが、spf-ashは全く、spfマウスは離乳期およびその後数週のみしか、高アンモニア血症を呈さない。このような高アンモニア血症発症には遺伝子異常の存在以外に食餌条件や遺伝的背景などの種々の因子が関与していると思われる。それらの因子を明らかにすべく、またミトコンドリアおよび臓器レベルでのOTC異常の影響を検討している。ミトコンドリアレベルでのアンモニアとオルニチンからのシトルリン合成を成長後の対照およびOTC欠損マウスで比較したところ、オルニチン濃度変化においてspfマウスは若干大きいkm値を示す傾向はあるが、Vmaxでは3者間に全く差異はなく、OTC活性が5-30%であってもミトコンドリアレベルでは律速段階になっていないことを示した。それにもかかわらず尿中へのオロト酸の排泄はspfおよびspf-ashでは対照よりも明らかに高いレベルを示すので、必ずしもアンモニア解毒能は正常とはいえない。又本年度はマウス肝を用いる肝灌流システムを作成したので、今後はこれを用いて臓器レベルでアンモニアからの尿素合成とピリミジン合成へのちっ素の流れについて検討可能になった。一方遺伝的背景が高アンモニア血症発症に与える影響を探るべく、変異OTC遺伝子を4種のマウスstrainに移入する実験を現在進めている。本年度購入した生物研究用酸素モニターはミトコンドリアの呼吸機能を監視する目的に、メタボリックケージは食餌摂取量の測定と尿の採取、オロト酸の尿中排泄測定に使用されている。
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