研究概要 |
ヒト赤血球膜陰イオン透過機構について蛋白質化学的手法を用いて, 透過分子機構の解明をめざして研究を続けている. 一昨年度から, 陰イオン透過系の活性中心を含むと思われるペプチドの精製を試みている(J.Blochem.100191(1986). 当年度は, そのペプチドの全アミノ酸配列の決定を目的として研究を進めた. そのペプチドは膜貫通性の分子量8500のペプチドであり, 昨年の研究成果から, Band3のカルボキシル基末端領域である可能性が考えられていた. 全アミノ酸配列が決定した結果, このペプチドはBand3のカルボキシル基より第3番目から76個のアミノ酸を含むペプチドであることが判明した. このペプチドは現在までに一次構造が決定している膜貫通性ペプチドと同様な特性を示めし, アミノ基末端より45アミノ酸は疎水性アミノが並んでおり大へん疎水的な性質を示めす. 46番目からは一転して親水性のアミノ酸が連なり, 特に, グルタミン酸が多いのが特長であり, この部分は赤血球膜の脂質二重層に埋もれているとは考えられず, 陰イオン透過チャネルを形成しているか, 二重層から外に露出している可能性が考えられる. アミノ基末端から18番目のリジンが陰イオンでアフィニティー標識される部位であることが一次構造解析の結果判明し, この部位が少くとも活性中心構成単位である. 今後は, このペプチドと他の膜貫通ペプチド間の相互関係に中心をおいて, 検索を続けてゆきたい.
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