研究概要 |
赤血球膜の陰イオン透過系は、我々の体内のPHを一定に保持するのに重要な役割を演じている。本研究は、その陰イオン透過系の機能調節に関する研究である。 ヒト赤血球膜の陰イオン透過は、「バンド3」と称される分子量の10万の糖タンパン質で媒介されていることが証明されている。「バンド3」タンパク質は赤血球膜を10回以上貫通している典型的な膜貫通型タンパン質であり、陰イオン透過の媒介担体としての興味のみならず、膜タンパク質の代表的なものとして蛋白質化学的な研究の対象とされている。 我々は、1983年に「バンド3」タンパク質分子内のカルボキシル基側に、陰イオン活性中心が存在していることを証明した。本研究期間では、この活性中心を形成する部分の同定と分離精製、さらには、その一次構造決定を行なうことを目的とした。以下、年次順にその成果を列挙する。 第1年次(昭和61年度):ピリドキサルリン酸が「バンド3」タンパク質により媒介され赤血球膜を透過することを利用して、活性中心構成ペプチドの選択的な標識に成功した。このペプチドが分子量8500であることをつきとめ、その分離精製を試みた(J.Biochem.100,191(1986))。 第2年次(昭和62年度):この8.5Kーペプチドの分離精製に完全に成功し、そのアミノ酸配列の決定を試みた。ほぼ順調に一次構造決定は進行したが、膜貫通部分のペプチドであったため、疎水性が強く、通常の方法では決定できない部分が出現し苦労したがほぼ完了した。ピリドキサルリン酸結合部位もほぼ決定した。 第3年次(昭和63年度):8.5Kーペプチドの全一次構造とピリドキサルリン酸結合部位の決定を完全なものとして発表した(J.Biol.Chem.263,8232(1988),Biochemistry(印刷中)。
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