研究概要 |
1.PC-12細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体ライブラリーを用いアデノシン受容体に対するモノクローナル抗体を得る目的で、シナプス伝達に変化を生じさせるモノクローナル抗体をスクリーニングした。PC-12細胞に類縁のラット副腎髄質細胞から分化させたシナプス形成細胞を用いたアッセイ系でPCH32-20というモノクローナル抗体のみがシナプス伝達を抑制した。この抗体は実際のラット上頸部神経節内でのシナプス伝達をも抑制した。Western blotにより、この抗原の分子量は約24Kであること、guantal analysisによりシナプス前で神経伝達物質の放出過程を抑制していることが判明した。後者は抗原がシナプス前アデノシン受容体と類似の性質をもっていることを示しており、分子レベルの実体を検討中である。 2.アデノシン・アゴニスト,アデノシン・アンタゴニストを用い、初代培養神経細胞を用いて、細胞内【Ca^(2+)】の動きを観察して、下記の知見を得た。 1)培養海馬神経細胞を比較的長期間保持したときにできるシナプス形成系を用いて、アデノシン,ATP,ADP,AMPをはじめ種々のアデノシン関連物質のシナプス伝達に対する影響を見たところ、アデノシン,ATP,ADP,AMPなど天然アデノシン・アゴニストや2・クロロアデノシンなどの人工アデノシン・アゴニストはシナプス伝達を抑制した。この作用は、シナプス前のアデノシン受容体を介しているものと思われる。 2)いくつかの培養海馬神経細胞はATPの添加によって、細胞内【Ca^(2+)】レベルの一過性の上昇を示した。この作用はテオフィリンなどアデノシン・アンタゴニストは抑制されず、ATP受容体を介する脱分極による電位依存性Caチャンネルを通るカルシウム電流の増加と考えられた。中枢神経系における二種の受容体が示された。
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