研究概要 |
PC12細胞を神経生成因子(NGF)処理によって交感神経細胞株に分化させ, その細胞を抗原として, 細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体のライブラリーを作製し, アデノシン受容体に対する抗体のスクリーニングを準備した. 新しく開発されたミリタイタープレートを用い, 生きた細胞をそのまま抗原とするELISAシステムを確立した. これによって, アデノシンの受容部分に対する抗体など, 細胞表面に実際に露出している機能部分をエピトープとして認識する抗体が選択的にスクリーニングできると期待された. 限界希釈によってクローニングされた, 抗体産性ハイブリドーマが約20クローンほど得られ, マウス腹水中での抗体産生によって得られた, 比較的多量のモノクローナル抗体を用いて, それぞれの抗体の性質を明らかにしつつある. 第一にNGF処理の時間により, PC12細胞は神経細胞株へ分化し, 突起と伸展するが, これに伴って, 次第に細胞表面への発現が増加する抗体, 処理後4日位で発現が最高になり, 以後減少してゆく抗体など, さまざまなパターンの発現を示す抗体がみられた. またラット胎児から調製した海馬ニューロンの初代培養において, いくつかの抗体はニューロンを免疫螢光染色し, 抗原が中枢ニューロン表面にも発現していることが判明した, この現象はニューロフィラメントに対する抗体を併用した二重染色でも確認された. 第二に, このような免疫組織化学的な方法により, 海馬ニューロンのうち一部のニューロンにしか, 抗原が発現していない抗体も見出された. この現象は前年度からの海馬ニューロンに対するATPの生理作用が, ニューロンによって異なるという知見と考えあわせ, ニューロンの種類を識別するモノクローナル抗体による. さらに詳しいアデノシン受容体のサブタイプの分布と作用の検討が必要なことを示している.
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