研究概要 |
ヒト悪性中皮腫と肺腺癌の病理組織学的鑑別を行うために, (a)人胸膜悪性中皮腫組織, (b)人正常中皮細胞, (c)自然発生ラット腹膜中皮腫に対するモノクロナール抗体の作製を試みた. ヒト悪性中皮腫は手術例1例(44才, 男), 死後2時間以内の剖検例2例(68才, 女,27才, 男)の合計3例を用いた. これらは病理解剖学的もしくは病理組織学的に悪性中皮腫(ヒ皮型)と確認された. これらの腫瘍組織の新鮮材料および凍結保存材料でBALB/cマウスを3・4回免疫し, ミエローマ細胞(Sp2/0-Ag14)を用いてハイフリドーマを作製した. 最終的に中皮腫および肺癌組織切片(凍結, 緩衝ホルマリン固定)を用いてスクリーニングを行った. 細胞融合は2度試みたが, 中皮腫例に反応し, いずれの腺癌とも反応しないクローンは, 未だ, 得られていない. (b)は非担癌患者の体腔液を低速遠沈後, 日立高速冷却遠心機(SCR20B)を用い, Percollグラジェントを利用して, 中皮細胞を分離して用いた. (c)の自然発生F344ラット腹膜中皮腫は2例得られ, 現在再び, 抗体作製を試みている. なお, 今までに得られた悪性中皮腫生検, 手術例9例, 剖検例9例(うち2例は生検, 手術例にも含まれる. ), 腺癌例10例を用いてサイトケラチン(低分子量型としてPKK1-3, 高分子量型としてEAB903), ビメンチン, CEA(M006)の免疫組織化学的検索を試みた(泉ら, 日本癌学会総会記事 pp.587,1987). PKK1は中皮腫, 腺癌のいずれも陽性(剖検例は7/9)を示すが, EAB903は中皮腫では8/9腺癌では6/10が陽性で, 両者の鑑別には成り得ず, monoclonal CEAは, 中皮腫では全例陰性, 腺癌手術例では, 7/10に陽性であり, これらのモノクロナール抗体の組み合わせで, ある程度補助診断が可能であることが確認できた.
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