研究概要 |
1.人体の各種の腫瘍について、これまでより症例を増やしてSLDの出現頻度を検討した。非上皮性腫瘍では、210例中183例(87%)にSLDが確認された。悪性リンパ腫では1例の髄外性骨髄腫でSLDをみたが、他の46例はいずれも認められなかった。神経系の腫瘍では、42例中34例、サルコイドーシスを含む肉芽腫では、16例すべてにSLDが確認された。上皮性腫瘍では、検索した250例のいずれにおいてもSLDを確認できなかったが、腫瘍間質の筋線維芽細胞ではSLDがしばしば観察された。これらの結果より、SLDは確かに非上皮性腫瘍の超微形態学的なマーカーとなるものと考えられた。また髄外性骨髄腫の1例でSLDをみたが、この構造物が間葉系細胞のanchoringとして機能していることが示唆され、興味深い。 2.科研費で購入した高速冷凍遠心器で40nm大の金コロイド粒子を作製し、これとプロテインAあるいは各種抗体を結合させた。これらを用いて電顕的に(post embedding法)SLDに対応する部位にどの抗体が結合するか検索中であるが、これまでは成功していない。抗原性の保持を高める目的で低温固定包埋を行ったが、下垂体腫瘍などのペプチドホルモンでは良好な結果を得たが、他のタンパク質を抗原とするものに対しては必ずしも一定した結果を得ていない。固定,包埋方法の一層の改良を試みる。標識抗体の組織,細胞への浸透性も大きな問題である。抗体の浸透性を高めるため、超薄切片上で抗原抗体反応を行う前に包埋剤を除去する方法(Capco et al JCB98:1978)も試みる。 3.究極的には細胞の内面側よりanchoringに関与している部位を観察する必要があるが、肝細胞及び非上皮性の培養細胞においてNermutらが用いたlysis-skirtingの方法が応用できる。(Eur.J.Cell Biol 42:1986)。電顕的、免疫組織化学的に検討を加える。
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