研究概要 |
1.人体の各種の腫瘍については, 昨年度までに症例を増やしてSLDの出現頻度を調べた. SLDは非上皮性の腫瘍で高頻度に出現することを確認した. 2.この構造物を電顕レベルで免疫組織化学的に同定するため種々の予備実験を昨年度から引き続いて検討している. まず, 高速冷凍遠心器で40nm大の金コロイド粒子を作成し, これとプロティンAあるいは各種抗体を結合させた. これらを用いて電顕的にどの抗体がSLDに対応する部位に陽性となるかPost embedding法を用いて検索したが未だ成功していない. 通常のエポンを用いた包埋処理ではその処理の過程でかなり高い熱を発生することや, 重合が3次元的に起こるため表面に露出する抗体が少ない可能性が指摘されている. 比較的水分を含んだ状態で重合操作ができるLR Whiteや紫外線を使用して低温で(-35度)重合することができるLowichyl K4Mを用いて抗原性の保持をはかりこの点を明らかにしたい. これまでは下垂体系の腫瘍などのペプチドホルモンはpost embedding法でも容易にその存在を同定できたが, 肝のアルブミンなどは通常のエポン包埋材料では同定が困難であった. 予備的に行なったLR WhiteおよびLowichyl K4Mを用いた実験では, 肝の小胞体やゴルジ体にもアルブミンを同定できるようになったのでSLDの同定にも有用な可能性がある. 3.SLDが非上皮性の腫瘍のanchoringに関与していることを想定しているわけであるが, SLDの結合する相手であると考えられる細胞の内面側の観察も押し進めている. Nermutらが用いたlysis-squirtingの方法を追試し非上皮性の骨肉腫細胞あるいは肝細胞においても物質を取り込む構造であるcoated pitが同定できることが分かったので, 2.でのSLDの同定と共にこの研究も押し進める.
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