研究概要 |
(目的)腫瘍細胞内に発現するimmunoreactive myelin basic protein(MBP)の生物学的意義を病理学的に解明する。(材料と方法)組織は10〜20%ホルマリン固定,パラフィン包埋の外科,剖検材料を用いた。臓器は肺,乳房,消化管,肝胆道,泌尿器,生殖器等で、各臓器原発の悪性腫瘍を無作為に選出した。検索方法は自家製抗MBP抗体を用い、免疫組織化学的にPAP法にて行なった。希釈倍率は1000倍で、4℃overnightの反応時間とした。(結果)Immunoreactive MBP陽性細胞は腫瘍の原発臓器,組織型,分化度等に関わらず存在していた。しかしその数,分布状態は症例により、また同一症例でも腫瘍内の部位によりかなりの差がみられた。また染色性には濃淡あり、胞体全体がびまん性を陽性に呈するもの,胞体の一部に限局するもの,顆粒状や封入体様のものなどと多種多様であった。(考察)我々は癌性ニューロパナーをきたした腫瘍細胞内にMBPと免疫学的に反応する物質が存在していることをつきとめ、報告した(Am J.Clin.Pothol 84(6)741-743,1985)。本研究においてimmunoredctive MBPは広く各臓器原発の、しかも癌性ニューロパナーと関連のない腫瘍細胞にも存在していることがわかった。腫瘍細胞内には自らを増殖させる、いわゆるgrowth factorといえる物質の存在が考えられているが、末だその物質の性状についての確証はない。一方MBPはその生物活性の一つとして強いmitogenic dctivityを有していることが知られている。以上よりimmunoredctive MBPの生物学的意義は腫瘍細胞の増殖因子の一つである可能性にあると考えている。
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