研究概要 |
1.脳動脈瘤の病理発生を明らかにするため, われわれが開発したラットの実験的脳動脈瘤の初期発生像を透過電顕的に検索した. 実験的脳動脈瘤はラットに腎性高血圧を発症させ, 一側の総頚動脈を結紮することにより作製した. 初期変化を脳動脈瘤の好発部位である前大脳動脈・嗅動脈分岐部において観察した. 動脈分岐部頂点よりやゝ遠位に内膜隆起があり, それに接する遠位部は動脈瘤初期変化を示していた. 内膜隆起部を覆う内皮細胞は腫大, 著明な空胞変性を示し, また内皮細胞間の接合部は離開していた. 内膜には中膜筋細胞の増生と間質成分の増加が認められた. 動脈瘤初期変化を示す部分の内皮細胞は扁平であるが, やはり多くの空胞を持ち, 退行性変化を示していた. 中膜は扁平な筋細胞よりなり, コラーゲン線維の増生が著明であった. 内弾性板は内膜隆起部より動脈瘤変化を示す部分にかけて, 断裂, 菲薄化, 消失等の変化を示していた. これらの変化より, 中膜, 弾性線維の変化が動脈瘤形成の基礎的変化であり, 内皮細胞の変化はこれらの変化の引き金となるものと考えられる. 2.病変成立におけるリソソーム酵素の関与を調べる目的で, 上記と同一部分の酸性ホスファターゼ活性を光顕的, 電顕的に検索した. 動脈瘤初期変化部位の内皮細胞および中膜筋細胞内に同酵素活性亢進を示すリソソームの増加が認められた. 上記の空胞のあるものは酸性ホスファターゼ活性を示し, 病変の成立にリソソーム酵素の関与が充分考えられる. 3.静注したホースラディッシュ・ペルオキシダーゼが動脈瘤初期変化部位の動脈壁に証明され, 内皮列の透過性が亢進していることを示している. 4.カニクイザルに腎性高血圧, 頚動脈結紮およびベーターアミノプロピオニトリル投与の処置を加え, ラットにおけると同様の実験的脳動脈瘤の作製に成功した.
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