本研究の第一の目的は我々の開発したラットにおける脳動脈瘤の実験モデルを使用し、病理発生を明らかにすることであり、第二の目的はより大きい動物に実験的脳動脈瘤を作成することにある。 1.ラットの実験的脳動脈瘤の病理発生 ラットに腎性高血圧を発症させ、頸動脈を結紮することにより作成した前大脳動脈、嗅動脈分岐部の脳動脈瘤の発生を種々の方法で検索し、次のような結果を得た。 (1)脳動脈瘤の初期変化は分岐部の頂点ではなく、太いほうの分枝の頂点より遠位部より始まり、変化は同部に存在する内膜隆起のさらに遠位側より起こることが分かった。したがって、頂点の中膜が欠損することによるとする従来の説は誤りであることが明らかとなった。(2)脳動脈瘤の初期変化部位の内皮細胞には種々の変化が観察され、この内皮細胞変化が脳動脈瘤発生の引き金となることが強く暗示された。(3)脳動脈瘤の初期変化部位では、内弾性板の変性、消失があり、脳動脈瘤発生の基礎的、原因的変化であることが明らかとなった。(4)脳動脈瘤発生初期部位に酸性ホスファターゼ活性が亢進しており、リソソーム酵素活性の亢進が血管壁の変性に関与していることが明らかとなった。(5)血液凝固のXIII因子が脳動脈瘤発生を抑性することが明らかとなった。 2.猿の脳動脈瘤作成実験 猿に腎性高血圧、頸動脈結紮およびベーターアミノプロピオニトリル投与という3処置を加えることにより脳動脈瘤作成に成功した。
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