研究概要 |
T,Bリンパ球は、リンパ系幹細胞から膜面で作用する種々のエフェクター因子や細胞間相互作用によって分化・成熟し、特定の機能を有する免疫担当細胞へと変化していく。これら各分化段階の細胞表面には、細胞型特異抗原,分化抗原等の各種の表面抗原が存在しており、大部分が糖蛋白質である。これらの糖蛋白質は、分化に伴い質的,量的に変化し、機能分化との間に密接な関連を示すと考えられる。これらの現象を分子レベルで把握するためには各分化段階の細胞を相当量必要で、現段階では困難である。私達は、糖鎖部分,特にアスパラギン結合糖鎖の性状について赤芽球,単球,骨髄球系について分化に伴う変化を明らかにしてきたが、本研究の初年度は、(1)これまで報告の少ないNon-T,Non-B白血病細胞株の樹立とその細胞特性を明らかにすること、(2)T,Bリンパ性白血病細胞膜糖蛋白の解析を行なった。(1)では、14才女児,11才男児白血病骨髄細胞から長期培養を試み、それぞれKH-3A,3BとKH-4細胞株を樹立した。細胞表面抗原では、KH-3A,BはCALL抗原弱陽性〜陰性,KH-4は陽性でTB表面マーカーは陰性であった。KH-3A細胞を更にアガロースでクローニングし,3A-2(46XX,2q+),3A-3(46XX)とそれぞれTPA処理でT,B細胞方向への分化を示すクローンが得られた。一方(2)では、【T_1】,【T_2】分化段階白血病細胞株(KH-1,2)のTリンパ性白血病と【B_1】分化段階のバーキットリンパ腫由来株Rajiの細胞膜糖蛋白を解析した。SDS-PAGE上で、それぞれの分化に対応したバンド・パターンを示し、更にヒドラジン分解後のエキソグリコシダーゼ遂次消化による糖鎖解析では、中性糖鎖はすべて高マンノース型で、分化に従い、異なる構造と、量比が観察された。以上の継続により次年度は、より詳細な結果がえられると期待される。
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