研究概要 |
種々の臓器に発癌性が認められているMethyl-nitrosourea(MNU)及び経口投与により主として胃癌の発生が知られているN-methyl-【N!´】-nitrosoguanidine(MNNG)を用いて異なる系のラットにおける発癌性の研究を行った。 研究1.生後7週令の雌性Long Evans(LE)及びWister Furth(WFN)ラットを用い、50mg/kg体重1回靜注を行った。その結果、主として乳癌(MCA)と腎腫瘍(KT)が発現し、その頻度はLEとWFNで各々MCAは22.7%と50.0%、KTは0%と46.7%であった。更にWFN(雄)とLE(雌)の間の【F_1】に同様の処置を施した結果、MCAは28.6%、KTは0%であった。以上、MCAによるKTの発現様式を遺伝的に考察するとMCAでは複数の遺伝因子によるメンデルの法則に従い、KTでは発現抑制の遺伝子の優位が示唆された。次に、7週令のLE,WFNラットを用いて核酸合成の前駆物質であるBRDU一回投与による腎組織での標識率を検討した結果、LEに比べ有意差をもってWFNに高いBRDUの出現を認めた。 研究2.生後5日目と28日目の雌雄両性W/Fu及びACIラットを用いて、N-methyl-【N!´】-nitro-N-nitrosoguanidine(MNNG)を5g/lの水溶液として胃チューブにより経口投与した。なお、投与量は体重10g当り、0.25mlを1回のみ投与し、1年間観察した。その結果、両系ラット共に前胃には68%以上の頻度でpapillomaの発現を認めたが、腺胃の腫瘍は5日令のACIラットのみに58%発現し、他は0%であった。一方、W/Fuラットでは5日令で64%、28日令で6%の肺腺腫を認めた。次にMNNG投与時期での腺胃、腺におけるmitotic indesを調べた結果、腺胃では5日令のACIに、前胃では28日令のACIに、又、肺では5日,28日令のW/Fuのみにindexの上昇を認めた。以上、両実験系を通じてMNU或いはMNNG誘発腫瘍発現におけるラットでの系並びに臓器特異性の差異は当該組織での細胞回転の状態が重要な因子となることを見いだした。
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