研究概要 |
分離肝細胞の肝内移植は, 重症肝機能障害や遺伝性代謝異常の治療への応用が期待できる. 本年は正常分離肝細胞を無アルブミンラット(NAR)の門脈内に注入し, それらがどのような過程を経て肝細胞内に生着するかをアルブミン免疫電顕法により検討した. 〔方法〕SDラットの肝細胞をコラゲナ-ゼ潅流法により分離し、生存率85〜95%の浮遊肝細胞を得た。これらをNAR1匹あたり2×D110┣D16┫ケ門脈内に注入し、2、6、12時間、1、2、3、5、7日目に肝を潅流固定した。次に肝組織の凍結切片を作製し、抗ラットアルブミン抗体により免疫染色を行い、光顕的に観察した後、エポン包埋して電顕的にアルブミン陽性肝細胞を検索した。 〔結果〕注入後2時間目では, 多くの注入肝細胞は門脈内で集塊を成していたが, 類洞内にも少数観察された. これらの肝細胞は球形に近く, 細胞表面はmicrovillsに被われており, 類洞内皮との接触はわずかであった. 6時間目では, 移植肝細胞との接触部で類洞内皮の細胞突起が欠損し, 移植肝細胞が宿主肝細胞と直接, 接触するとともに, 類洞内皮が移植細胞を被い始める像が認められた. 12時間目以後では移植肝細胞は類洞内皮細胞に被われて, 肝細胞索内に完全に取り込まれた. これらの肝細胞では, 隣接する宿主肝細胞との間に毛細胆管が観察され, さらにその周囲にはtight junctioも認められた. 〔結論〕門脈内に注入された肝細胞は, 類洞面に接着したのち, 比較的短時間内に宿主の肝細胞索内に取り込まれ, 管細胞に組込まれることが明らかになった.
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