研究概要 |
本研究には2つの目的があった。ひとつはNIH 3T3に代わる活性型癌遺伝子検出の新しい受容細胞を検討することで、他のひとつは形質転換に伴う腫瘍抗原、より正確にはtransfarmation-associated antigen(TAAs)の解析を行うことであった。その結果、ラット胎児由来線維芽細胞WFBがNIH3T3には劣るが、BALB3T3、NRK等の細胞に比し、明らかに高い癌遺伝子感受性を示した。NIH3T3で検出不可能な癌遺伝子を検出可能か否かについてはなお検討中である。一方、WFBのTAAsについて単グローン抗体を世いて解析したところ、1)WFBのTAAsは、少なくとも4種類存在し、それらは86、62、101、67の分子量(kd)を有する蛋白であった。このうち、86分子はPDGF刺激WFBにも発現し、形質転換とは直接関係なく、一方他の3つは形質転換とリンクしていることが推測された。2)86分子、62分子はnatural killer細胞のtarget structuresとして、宿主の癌免疫監視機構において機能していることが示唆された。3)67分子は、WFBのras形質転換細胞の約10%に限定発現し、しかもheat、superoxide等のstressで誘導可能であり、また、CAMPでin vitroで強く発現増強もみた。しかしpolyoma middle T DNA移入によるWFB形質転換細胞、さらには母細胞WFBには、いかなる方法でも誘導可能でありいわゆるneo-antigen,tumor specific antigenとしての可能性を示唆した。 このように形質転換に伴うnatural killer target structureの発現、同定、および腫瘍抗原のあるものがneat shock-related proteinsであることを示した意義は大きいと考える。今後、TAAsの構造と遺伝子支配を明らかにし、ヒトにおける同様な抗原分子の解析を行い、より効率的な癌分子免疫療法の確立を探る予定である。
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